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拝見~大寄せ茶会・濃茶席 ~ 茶道の知識

2016/03/16

拝見~大寄せ茶会・濃茶席 ~ 茶道の知識


お茶席には、大きく分けて、少人数のあらかじめ決められた客を招待して、懐石、濃茶、薄茶をもてなす正式な茶会である「茶事」と、多数の客を一同に招き菓子と薄茶(または濃茶)のみをもてなす「大寄せ茶会」の2つがあります。  


個人が行う少人数の「茶事」に比べ、大勢の客がつどう「大寄せ茶会」は、1日に100人~1,000人もの客が集まり、野点や立礼の席の場合もありますので、お茶をはじめて体験する初心者の方にも、最適な茶会です。 流派により、作法の異なりはありますが、ここでは裏千家の作法をもとに、大寄せ茶会での濃茶席の流れと拝見について触れます。


大寄せ茶会・濃茶席 ~ 茶道の知識

1. 待合での拝見

待合は、次の一席に入る連客が席入りを待つ部屋です。人の大勢集まる大寄せ茶会では、会場に複数の亭主がおり、濃茶席や薄茶席が用意され、日に複数回の案内があります。

様々な時間に多くの人数が集散しますので、玄関先などに身支度を整える部屋が準備されていることが多く、亭主からの指示があるまで待合で、席入りを待ちます。


待合では、毛氈(もうせん)などが敷かれ、掛軸が床に掛けられており、煙草盆が置かれています。連客は、掛物を拝見してから、席につきますが、正客は、煙草盆の前に座ります。待合での掛物の拝見は、掛軸の作者への敬意を表す意味で、扇子を前において、真のお辞儀をし、畳に軽く手をついた姿勢で拝見します。

待合の掛物は、時候の挨拶にもなる画賛(詩文のついた絵)などが選ばれることが多くみられます。どうして亭主がこの掛物を選んだのか、掛物の内容を考えながら鑑賞し、もう一度お辞儀をして席を立ちます。

亭主から席入りの案内があれば、順に再度掛物を拝見して、本席へと向かいます。煙草盆は折りをみて、火入や灰形などを拝見しておきましょう。


2. 床・点座前の拝見

濃茶席では、諸荘り(掛物・花・香合)、点前座(亭主が茶を点てるために座る場所)を拝見します。順に席に入り、扇子を前に置いて真のお辞儀をしてから、掛物・花・香合の順に拝見します。掛物・花・香合のバランスを見て、香合の釜敷の色との調和も楽しみます。

大寄せ茶会では、人数も多く時間も限られますので、相客を気遣いながら、拝見させていただきましょう。

諸荘りの拝見が終わったら、一礼して、点座前に移動します。点座前では、中央に座り、釜や棚があれば、棚荘りなどを拝見し、定席に戻り、亭主への挨拶を待ちます。


3. 茶碗の拝見

大寄せ茶会で、一席に人数が多い場合は、全員で濃茶を服するのではなく、4,5人など、まとめて一碗をいただくことになります。

正客が濃茶を服し、次客に手渡し、次客がひと口濃茶を飲んだ時点で、茶銘やお菓子の銘などを亭主に訪ね、続けて、床の掛物など諸荘りについて問うことができます。

末客が濃茶を飲み終え、袱紗を置いたタイミングで、正客から末客に対して、茶碗の拝見を所望します。


茶碗の拝見は、まず畳の縁外に茶碗を置き、全体の形や様子などを拝見します。次に茶碗を手に取って、低い位置で茶碗の内側と外側を丁寧にみます。高台には手を触れぬよう注意し、再度全体を拝見してから縁内で送ります。


4. 茶入・茶杓・仕覆の拝見

茶碗の拝見がすむと、正客から亭主に所望して、茶入・茶杓・仕覆を拝見させていただきます。

亭主は客付の定座に茶入・茶杓・仕覆を出します。客は拝見物を縁内膝寄りから、茶入、茶杓の順に預かり、仕覆は左手の上で打ち返してから置きます。

茶入・茶杓・仕覆の順に低い位置でじっくりと拝見させていただき、拝見後は縁内で次客に送ります。 拝見がすんだら、正客は入席した謝意を亭主に伝え、茶入の形や窯元、銘などをたずね、続けて茶杓の作者と銘、仕覆の裂地などをうかがいます。


5.退席時

大寄せ茶会では、人数などの関係で、拝見物を席中ですべてまわすことができないという場合もありますが、そういった場合は、退席時に定座に出された拝見物を数名ずつまとめて拝見させていただきます。

時間が許せば、退席時にもう一度、床と点座前を正面から拝見させていただきます。

最後に今一度、床や点座前を、先ほど拝見させていただいた茶碗や茶入、茶杓などとあわせて思い出しながら鑑賞することによって、席入り時には、おぼろげだった亭主の趣向や意図を、全体的にくみ取ることができるでしょう。


※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。