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花入の拝見と見所 ~ 茶道の知識

2016/03/01

花入の拝見と見所 ~ 茶道の知識


花を入れる器である花入(はないれ)は、茶の湯の世界独特の言葉です。花を入れる器は、一般的には花瓶、華道では花器や花生(はないけ)という言葉が使われていますが、茶の湯では、16世紀中頃から花入といいます。


茶室の床荘りにおいては、掛物(掛軸)の次ぎに重要な役割を持っているのが花で、その花を「引き立たせる」ための道具が花入です。

つまり、“花入は花のためにあるもの”というのが大原則で、よほどのことがない限り、花入の拝見の所望は控えた方がよいでしょう。

花入は空間とのバランス、掛物、香合などのバランスなどを気にして拝見する道具ともいわれています。


正午の茶事では、初座の床に掛物、後座の床に花入を掛け、亭主自らが花を入れますが、こういった花をかざるという行いは、仏前の荘厳から始まったと考えられています。

香炉や燭台とともに仏具として花が使われ、それが茶の湯の世界に用いられるようになったといわれています。


中国から抹茶文化が伝わった室町時代には、書院の式正の荘りで、掛物に唐物の胡銅(古銅)や青磁の器を添えた荘り方をしたようです。

桃山時代になると、千利休の創案による竹花入や籠、瓢の花入など、身近な素材の花入が登場しました。

そして、千利休が床に花入を掛け、掛物の鑑賞を行ったことにより、花入の地位も高まっていきました。

その後、高麗物や南蛮物の陶磁器や、日本の備前、伊賀などの焼き物の花入も用いられるようになっていきました。


花入の見所・拝見の流れ ~ 茶道の知識


茶事での花入の用いられ方はいくつかあり、床の壁のほぼ中央に打たれている中釘に花入を掛けたり、床柱の花釘に掛けたり、床に置いたり、天井に打たれた釘に釣ったりといった荘り方があります。

いずれの場合も、床の中での空間で、最適なバランスとなるよう亭主が位置の工夫をしていますので、亭主の意気をくみ取るように拝見しましょう。


茶会では、掛物と花を同時に荘る「諸荘り」が一般的で、その場合は、床の空間、掛物、花と花入の調和を主眼において拝見しましょう。

胡銅など金属製の花入は、時代や金属の肌合い、形状、文様が見所です。 竹花入では、竹の節やひげ根(竹の地中に伸びている根の部分)の表情が見所です。在判(銘や花押)にも注意を払いましょう。


花入を畳敷の床に置く場合は、籠花入以外はすべて薄板の上に置かれます。

薄板の種類は花入の真行草によって決められています。真の花入には塗の矢筈板、行は塗の蛤端、草は木地の板が基本です。

その他、薄板には丸香台や宗匠の好み物などもあり、亭主は花入の大きさや色の具合によって、薄板にも気を配って選定していますので、客は花入と薄板の組合せにも注意深く目を向けるように心掛けるとよいでしょう。


※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。