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茶の湯に使われる工芸~染織物 ~ 茶道の知識

2016/06/10

茶の湯に使われる工芸~染織物 ~ 茶道の知識

 

名物裂

茶の湯では、染めと織りが施された布地である染織物に、固有の名称をつけて「○○裂」と呼びますが、古来、「名物裂」として大名や茶の湯の数寄者たちを魅了し、珍重されてきました。


名物裂は茶の湯が盛んになった室町時代後期から江戸時代中期にかけて、中国(主に宋・元・明・清)や東南アジアから舶載した大変高価で貴重な裂を指します。

渡来した当初、裂は高僧の袈裟や帳や、公家の装束として、さらには武将の衣装に用いられました。のちに、茶の湯の世界でも、様々な美術工芸品とともに名物裂として用いられるようになりました。


茶の湯では、茶入を収める仕覆や服紗(帛紗)に仕立てたり、書画を鑑賞するために表装する掛物にも「名物裂」が用いられましたが、茶人が好んで取り入れた名物裂には、衣服などに用いるよりはるかに複雑な織り方やデザインが施されたもので、非常に価値が高く、珍重されました。


一国に値するほどの価値を持つものとして、権威の象徴でもあった名物茶入は、江戸時代には、将軍家への忠誠を示すために献上されるなど政治的に利用されましたが、その名物茶入を包む名物裂も、現在では想像もできないほどの高価なものでした。名物茶入の収めるために用いられた名物裂は、一寸四方を「一坪」と数え、金何枚にも値する価値あるものとして取引されていたといいます。


 

茶の湯の染織物の主な種類 ~ 茶道の知識


金襴・銀襴…金銀糸を経緯糸として紋様を織り出した美麗豪華な織物。この技法は天正年間 (1573~1592年)に中国から堺に伝わったもので、後に西陣織で盛んに織られた。


緞子…基本的に、名物裂では経糸と緯糸が各五本ずつの五枚繻子の表裏の組織をそれぞれ地あるいは紋様に用いた絹織物。段子または純子とも書かれる。


…様々な色糸で紋様を織り出した華麗な織物。


印金…薄手の絹地の上に文様を彫った型紙を当て、漆や膠などで接着剤を薄くひき、その上に金箔を張りつけて牡丹唐草や菊牡丹などの紋様を表したもの。羅・紗・綾地が多く、紫羅地が最も尊重される。


更紗…インドが起源の木綿地の文様染め布の総称。手書き、型染めがあり、中国・東南アジア・イスラム圏・ヨーロッパ産があり、和更紗もある。


縫取…紋様の部分にのみ、縫取用の緯糸を織り込んだ紋織物。


風通…経糸、緯糸それぞれ二色を用い、裏衣に色替りの同じ紋様が出たもので、両面錦ともいわれる。


海気…経糸・緯糸とも練絹を用いて平織したもので、表面は平滑で美しい。日本では甲斐(現在の山梨県周辺)の特産となり、甲斐絹と呼ばれた。


紹巴(しょうは)…紋織物の一種で、花文・幾何学文などが金銀糸を交えて横向きに織り出されたもの。


斜子(ななこ)…経糸・緯糸に同数の糸を引きそろえて織った平織。織り目が市松のようにみえ、つややかな光沢がある。


北絹(ほつけん)…撚りのない絹糸を数本引き揃えて平織にした斜子の一種。


しじら…織物の表面に縦方向に細かい波状の細かい皺を出したもの。


…捩織で織られた、薄く透き通る絹織物。 緯糸を一本ずつ取った上で、強捻糸の経糸を二本ずつ絡ませて織り上げたもの。


…捩織で織られる、薄く透き通った絹織物の一種で、絡み織で織る。江戸時代に夏の着物に用いる生地として発展した織物で、紗の変形に当たる。


…紗や炉のように隙間のある織物で、目が粗く、麻が多い。


「間道(縞文様のある裂)」は、名物裂の名でよくみられますが、織技法の名称ではなく、縞や格子の意匠による名称であるためここでは加えていません。