買取実績紹介

色被せガラス 切子 猪口揃 薩摩びーどろ工芸

作家名: 薩摩びーどろ工芸社
更新日: 2022/10/12

この度いわの美術でお買取りいたしましたこちらの作品は、独自の熔解窯を持つ薩摩びーどろ工芸社が手仕事と最高級の素材にこだわって制作した、切子の彫りと発色の美しさが印象的なお猪口セットです。



薩摩びーどろ工芸社


薩摩郡にある薩摩びーどろ工芸社は1994年に薩摩切子の復元を目指して設立され、伝統に忠実な製造に取り組み、次々と金赤藍色黄色などの発色を成功させています。

1997年には鹿児島県伝統的工芸品指定を受け、さらに2006年には新色として黒色の発色に成功、業界で初となる薩摩黒切子を発表しました。


創作の原点になるものは「感動」であるとする創立者の加藤征男氏は、日常生活に薩摩切子を通していかに感動を伝えるか、そのためにはまず作り手自身が感動しなければならない、と語っています。


薩摩びーどろ工芸社では確かな技術をもつ制作者たちが五感を研ぎ澄まし、素材、発色、デザインにいたる全ての工程において真摯にガラスと向き合い、自身の感動をカタチにした逸品を送り続けています。




伝統の切子工芸

そのルーツははっきりしないものの、江戸時代後期にビードロ職人の加賀屋久兵衛が作った細工が始まりとされています。もともとは透明なガラスに細工を施した、のちに『江戸切子』と総称されるものが、薩摩藩の大資本のもと、日本の南端の地で美術品として発展を遂げたものが『薩摩切子』と呼ばれています。


色被せされた素材(透明素地の上に色素地を重ねたガラス)を薄く伸ばし、透明感がその特徴として定着した江戸切子に対し、厚く被せた色ガラスに切子加工された重厚感が特徴の薩摩切子

その代表的な色といえば、銅で発色させた赤ガラスが有名ですが、この色の発色は極めて難しく、今日の技術をもってしても、この色被せのガラスを同じ色合いで連続して製品にすることは至難だといわれています。透き素地と銅赤の微妙な歪みが後になって現れ、うまく冷やしたつもりでも、切子職人がガラスにカットを施している最中、いよいよ作業も佳境に入ろうとした頃になって、突然パカンと器が真二つに割れてしまうことがあるといいます。この気難しい紅色に近い赤ガラスこそ薩摩ガラスの真髄で、今日までその名声を高くしている所以だとされています。


それら紅色や瑠璃の裏側から透けて見えないほど厚く被せられたガラス器に、職人が苦心してカットを施したのが薩摩切子ですが、本格的に薩摩切子が作られた期間は実は極めて短く、約20年ほどだとも言われています。


一連の産業を強力に推進していた11代藩主斎彬の急死による工場の衰退、薩英戦争による工場の焼失、明治政府による藩政の廃止などが原因で産業が途絶え、全盛時100人以上の工員がいたガラス工場も5人に減るなど、まさにその歴史は波瀾万丈でした。


一度は途絶えながら、100年を経て再び職人の手で復活を遂げた現代においても、そこにたずさわる職人はわずか100人ほど、その中でも独自の作品を作れる職人は十数人しかいないそうです。


高い技術を保ちながらも後継者不足に悩まされている中、薩摩びーどろ工芸社などの復興事業には僅かながらも若手が弟子入りしています。熟練した高度な技術が必要なだけに修業には長い年月を要しますが、伝承をこれからに引き継いでいくためにも、新しい世代に更なる薩摩切子の発展に期待がかかります。