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茶道具基礎知識~唐物茶入

2017/01/13

茶道具基礎知識~唐物茶入

  

濃茶を入れる茶入には、中国製の唐物茶入と、東南アジアで焼かれた島物(南蛮物)、日本製の和物茶入があります。茶入は茶道具の中では高い位置付けにありますが、中でも唐物茶入は最高位に位置しています。茶入の出発点は唐物茶入であり、和物茶入を代表する瀬戸茶人の多くが唐物茶入を模倣していることも、そうした経緯を伺わせるところです。

  

唐物茶入とは

  

唐物茶入は中国の宋代から元代にかけてつくられた茶入の総称です。最高位の茶道具として位置づけられてきた唐物茶入は、早くから珍重され、作行きとともに伝来も重視されてきました。

  

宋代を中心とした初期の漢作唐物と、唐物に分けられます。漢作唐物は土味、釉調、作風とも唐物より上作とされています。

現存する漢作茶入はすべて大名物になっており、唐物茶入の多くが名物になっています。

大名物:利休以前に選定された名物茶器で、最もいわれが深く、貴重なもので、そのほとんどは国宝や重要文化財として登録されています。東山御物(室町幕府8代将軍・足利義政によって収集された絵画・茶器・花器・文具などの称)がその代表。

  

唐物茶入は、専門家によれば、もともと中国では雑器的な扱いを受けていたであろうと思われるもので、その茶入が日本渡来して、一気に足利将軍家の御物となったとされています。この雑器が茶入として見立てられることで、当時の最新文化であった書院飾りにおいて時代の寵児となりました。

  

唐物茶入について具体的に書かれている最も古い文献としては、16世紀初頭に記された「君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)」があげられます。

「君台観左右帳記」は室町時代、足利義政東山御殿内の装飾に関して、能阿弥・相阿弥が記録したものの伝書で、茶陶を中心とした美術工芸史、茶華の基礎史料となるものです。同書では茶入を「抹茶壷」や「壷」と名称で記されており、そこには19種類の茶入の形が図示されています。


それぞれに「茄子」「ろてい」「大肩衝」「小肩衝」「大海」「九壷」「弦つぼ(水滴)」「手瓶」「えふこ」「飯銅」「瓢箪」「擂茶」「尊形」「勢至」「湯桶」「常陸帯」「棗」「鶴頸」の名称が付けられています。

これらの名称は、形態により分類され、固有の茶入の呼称であった「常陸帯」と「勢至」以外、そのほとんどが今日まで伝えられています。 さらに、今日ではこれらの唐物茶入の種類名称に加えてさらに「撫肩衝」「文琳」「尻膨」「内海」などが使われています。

  

主な唐物茶入の形

  

肩衝…寸胴形であり上部に肩がついている。織田信長や豊臣秀吉といった権力者が こぞって求めたのが天下三肩衝(新田・楢柴・初花)と呼ばれるものです。

文琳…肩衝に似ているが、口がすぼまり胴は丸みを帯び、下膨れな形をしています。 林檎の形に似ていることからこう呼ばれています。

茄子…胴は丸みがあって尻の方が大きい。首の部分はほとんどありません。

瓢箪…瓢箪のように中央にくびれが付き尻の方が大きい形をしています。

丸壷…文琳に似ていますが、胴が丸みを帯び首が長いものをいいます。

鶴首…丸壺よりもさらに首が長いもので、伸び上がる首が鶴の首のような形をしています。

大海…口が広く、平丸型の茶入です。

  

桃山時代の天正年間(1573~1593年)に千利休によって侘び茶が大成されたことは周知のことですが、これにより茶の湯で使われる茶道具が一変したことはいうまでもありません。

それまで主流であった唐物道具に代わり、当時つくられた新規な道具類が好んで用いられるようになりました。

特に、茶碗や水指にはこうした傾向がみられ、「山上宗二記」にみられるように、当時の数奇の茶の湯においては唐物茶碗は廃れ、高麗物や和物が当世の茶碗とされたようです。


しかし、そうした時代においても茶入はおいては相変わらず、唐物が珍重されています。

先述の「山上宗二記」においても、茶の湯道具の筆頭とされたのが唐物茶入です。例えば茄子茶入では「紹鴎茄子」「つくも茄子」など、肩衝では「新田」「初花」をはじめとして現在も伝来する肩入れ茶入が列挙され、全体で49もの唐物茶入が記され、和物茶入の記載がみられません。それらは織田信長、豊臣秀吉が所持していたもの、村田珠光、武野紹鴎、高名な茶人が所持したもので、名物茶入と数奇の茶入をわけています。

  

桃山時代後期には和物茶入が流布し、茶の湯の世界では次第に唐物茶入が実用しなくなっていきますが、むしろ和物茶入が流行することによって、伝来、由来をもつ唐物茶入は象徴的存在となり、厳然とした最高位の茶入として伝えられていきました。江戸時代には武家の力の象徴として徳川家や大名の間を転伝し、徳川幕府後は名物茶具として珍重されてきました。

  

唐物茶入の例

  

唐物大海茶入 八島大海 耕三寺博物館所蔵

唐物円座肩衝茶入 利休円座 大名物五島美術館所蔵

唐物文琳茶入 銘「吹上文琳」五島美術館所蔵

唐物肩衝茶入 銘「遅桜」 大名物三井文庫所蔵

肩衝茶入 銘「新田」 大名物 柳営御物(徳川将軍家の名物茶道具)德川博物館蔵

肩衝茶入 銘「松屋」 大名物 根津美術館蔵 

肩衝茶入 北野肩衝 東山御物 大名物 三井記念美術館蔵 

肩衝茶入 銘「背高」大名物 柳営御物 穎川美術館蔵

肩衝茶入 銘「師匠坊」 大名物  出光美術館蔵

上杉瓢箪茶入 東山御物 柳営御物 大名物 野村美術館蔵

鶴首茶入 利休鶴首 柳営御物 若狭酒井家所持など

  

  

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また、茶入は、仕服も茶席では拝見の対象となり、名物には何種類もの仕服を伴うものも多くみられます。そのため、茶入の買取では付属する仕覆の有無も買取査定に影響致します。 茶入のご売却の際は、共箱とあわせて仕覆の有無も忘れずにお知らせください。

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