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茶の湯に使われる工芸~漆器 ~ 茶道の知識

2016/06/10

茶の湯に使われる工芸~漆器 ~ 茶道の知識


古来、漆芸は日本、中国、朝鮮半島などで発達してきた東洋独自の分野です。

漆芸に使われる漆液は、漆(ウルシ)の木より染み出る樹液で、固まると美しく丈夫な塗膜をつくり、また、強い接着力を持つため、古くから多くの用途に応用されてきました。


特に日本では、良質な漆の木が育つこともあり、中国などとはまた違った漆工芸品が古くから生産されました。

日本の漆芸は高度な技法を有しており、文房具や茶道具などに用いられ、特に漆面に加飾する蒔絵の技術が発達しました。


茶の湯に使われる工芸~漆芸の主な技法 ~ 茶道の知識


茶道具に使われる代表的な漆芸の技法には以下のようなものがあります。


蒔絵…日本産の漆の強い接着性を利用した独特の加飾技法です。漆の下地の上に、漆液で文様を描き、漆が乾燥して固まる前に金箔や金・銀粉を蒔きつけることから蒔絵と称されています。主に平蒔絵・研ぎ出し蒔絵・高蒔絵などがあります。


沈金…下塗りした漆の表面にノミなどで細い線刻国を施し、出来た溝に漆を擦り込み、余分な漆を紙で拭き取ります。凹部に金箔、微細な金銀粉などを摺りこんでいく技法です。


彫漆…木などの器胎の上に漆を数百回塗り重ねることにより、一定の厚さの漆層をつくり、そこに小刀や針などで文様を彫り出していきます。


堆朱堆朱は、朱漆を塗り重ね、彫刻したもので、堆黒は黒漆を塗り重ね、彫刻したものです。赤色と緑色の漆層をつくり、それぞれ文様を彫り出す紅花緑葉もこの技法に含まれます。


螺鈿…貝の真珠層を薄く切り抜き、漆の下地に嵌め込んで文様とする技法です。螺鈿に使用される貝は鮑や夜光貝、白蝶貝、黒蝶貝などがあります。茶の湯で「青貝」と呼ばれるものも螺鈿の技法のひとつです。象嵌法としては貝を下地に貼ってから漆で塗り込める塗込法と、文様部分を彫り下げて貝を嵌める彫込法があります。


彩漆…漆の下地の上に、色漆で文様を描く技法です。琉球漆器などに多くこの技法が用いられています。


存清…室町時代に中国より日本へ伝わり、江戸時代に四国の高松で技法が完成され現在に受け継がれた技法です。彩漆で文様を描き、乾燥後に文様の輪郭や毛彫りを施します。


填漆…多くは竹や籐で編んだ器胎に紙を貼り、その上に漆を全面に塗り、そこに文様を線彫して、違う色の漆をうずめて研ぎ出し描く技法で、そのほとんどが赤色と黒色の漆を用います。


茶道具で用いられる漆器には、技術的にも、デザイン的にも高い水準が求められますが、上記のような漆の加飾技法を駆使して、茶入や香合、菓子器、また懐石料理の器などの優品が数多くつくられています。