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茶道具の豆知識~名物裂

2017/04/17

茶道具豆知識~名物裂

   

名物裂とは


名物裂(めいぶつぎれ)は、最高級の絹織物の呼び名のひとつです。茶道の発達に伴い、名物茶道具の表装裂や茶入の仕覆、帯地などに用いられに使用されるようになり、歴史的にも大名家や社寺などで特に珍重されてきました。

   

名物裂の多くは、鎌倉時代から江戸時代前期にかけて中国との貿易で陶磁器、銅銭、染料などとともに絹織物や生糸が舶来しました。その中には元・明代の金襴、銀襴、緞子、間道、風通、錦、印金、モールなど極上の絹織物ももたらされました。

また、鎌倉時代には、貿易とは別に、仏法を求めて中国に渡った禅僧たちが金襴や緞子、錦類を袈裟などの法衣にするために持ち帰りました。

   

このように、様々な機会に日本に舶載した金襴、緞子、間道などの裂(きれ)類は、室町時代中期の唐物を尊重する風潮により、唐絵、墨蹟の表装裂や、唐物茶入の仕服に用いられるようになりました。

殊に室町時代後期に茶の湯が本格的に興隆すると、唐物に対する鑑識眼が高まり、それとともに名器と呼ばれる茶道具に添えるのにふさわしい品格をもった裂が求められ、珍重されました。

   

今日、名物裂と呼ばれる裂地の多くは室町時代~江戸時代前期頃に舶載したものとされますが、当時は名物裂という名称や、〇〇緞子、〇〇金襴といった呼び名も確立されていませんでした。


次第に茶会記などに名物裂特有の呼び名が用いられるようになり、その流れを受け、江戸時代後期に松平不昧が「古今名物類聚」を編纂し、名物切の名で106種の裂地を収録したことで、「名物裂」の名称が定着しました。

茶人たちは茶器や掛物にとどまらず、名物裂にも茶道における姿勢や理念を見い出したため、一般庶民への流通はなく、希少価値的な存在として迎えられ珍重されました。

   

名物裂の時代区分

   

現在約500種近くの名物裂が確認されていますが、昔から茶人たちは裂地の渡来した時期を何段階かにわけて分類してきました。

古来の説によれば、極古渡りが足利義満の時代(1378~94年)の渡来品、古渡りが足利義政ごろ(1449~72年)の渡来品、中渡りが永正、大永ごろ(1504~27年)、後渡りが永禄・天正ごろ(1558~92年)、近渡りが徳川家康、豊臣秀光ごろ(1603~22年)の渡来品、新渡りが元禄ごろまで(18世紀初頭)の渡来品、今渡りが享保以後(18世紀前半)の渡来品とされています。


現代の研究では、以下の通りが一般的な基準となっていますが、確実な根拠に基づいているわけではありません。

極古渡り根抜け:鎌倉時代の渡来

古渡り:室町時代初期

中渡り:室町時代中期

後渡り:室町時代末期~桃山時代

近渡り:近世初頭(17世紀前期)

新渡り:江戸時代中期(18世紀初頭)

   

裂地の名称

   

古来、茶の湯では名物裂に、それぞれ〇〇裂という固有の呼び名をつけて親しんできましたが、これらはどのような理由で通称、雅称がつけられたのでしょうか。

裂地の名称は主に以下の4つに分けられます。

<名物道具の名称からとったもの>…日野間道、米市金襴など

<所持者や所蔵寺院の名称からとったもの>…珠光緞子、利休緞子、角倉金襴、興福寺銀欄など

<裂自身の文様からとったもの>…荒磯緞子、花兎金襴など

<裂の地合や織法の種類からとったもの>…紬地金襴、志々良間道など

   

茶の湯に用いられる名物裂の文様

   

名物裂の文様には下記のような多種多様な図柄があります。

   

植物文:唐草文、牡丹唐草文、桐唐草文、唐花文、梅花文、草花文、笹蔓文など。

動物文:獅子、虎、象、羊、馬、鹿、兎など哺乳類のほか、昆虫や魚文、鳥文など多種多様。

吉祥文:龍、麒麟、鳳凰、鶴、霊芝、宝尽くしなど縁起のよいめでたさを表す文様。

天象文:雲、星、日、月などを文様化したもの。

自然文:海、川、池、沼などの水の姿を文様化した水文(波文、流水文など)。

幾何学文:三角形、正方形、菱形、多角形、円などを連続文様にしたり、組み合わせたりして構成する文様で、網代、石畳、立涌、鱗、七宝、亀甲などの図柄がある。

※人物文は茶入など茶道具にはあまり用いられません。

   

   

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茶道では茶入の仕覆、茶碗や茶杓筒の仕覆、古帛紗や出服紗など袋ものの名物裂をよく目にします。特に茶入には名物裂・古代裂が多用されており、茶入によっては名物裂の替袋を何枚も持つものが存在します。


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